ええ話かて
敬老の日に因んだお題について、書いてみようと思う。
私のおじいちゃん、おばあちゃんは、共に
ジジ、ババ、と呼ばれている。
いつからそうなのか、私にはわからない。私が生まれた時からなのか、私が母の腹のなかでスヤスヤと眠っていた時からなのか、それとも母が生まれた時からそう呼ばせるように祖母が洗脳したのか、とんと見当がつかぬ。
ただ、ジジ、ババ、と短く呼ばれている私の祖父と祖母はとにかく仲が悪い。
祖母は祖父に文句を垂れ流し続けて早50年。
祖父は母をこき使い続けて早50年。
「なんで離婚しないの?」
そう、幼い頃の私は無垢な心でババに尋ねたのを覚えている。
ババは答えた。
「あんな人でもね、いいとこあんのよ。」
「昔はすごく優しかったし、背も高くてすらっとしてて、あとほらジジ、機械も得意でしょ?そこかしらねえ、惚れたのは」
ほほう、惚気か。
「あとは、クレーマーなところね!」
ほほう、最近覚えたての言葉を孫に披露する可愛いご老人か。
「前なんて、高速で速度違反して、警察に捕まったのに、『僕はね、速度違反してないですよ。だってね、お兄さんが測ったのはあの位置でここから約1000m手前で、僕がスピードを出したのは・・・・・』って1時間もやりとりして!」
ほほう、クレーマーか。
結局警察の人が『おじいちゃん!もうわかりました!じゃあ後日電話しますので、処分はその際お伝えしますので!今日のところは帰っていただいて結構です!』って言わせて、もう大変だったのよお!」
ほほう、武勇伝か。
「んで、次の日になっていくら待っても警察から電話が来ないって言うんで、自分から電話かけちゃって!警察もビックリよねえ、捕えたとおもったら、相手の年寄りは理工学部の教授なんてねえ!」
ほほう、賢者か。
「そういう、頑固だけど筋が通ってるっていうの?だから別れないんじゃないかしら」
ほほう、これが、いい夫婦ってやつか。
頼むから長生きしてくれジジババよ。